短編小説~親友~

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保健室。の隣。1階ロビー。 ここのロビーは玄関と繋がっており、テーブルや椅子などが置いてある、生徒たちの共有スペース。 昼休みや帰りの時間は生徒で溢れ返っているくらい活気があるが、今は授業中。人がいるはずもない。 それを知って、結衣は保健室にいかずに、このロビーの隅にある椅子に腰掛けていた。 結衣「………健……悟…?」 頭を両手で抱え込み。「何か」を考えていた。 結衣「健が学校に来てくれたのは嬉しい。でも…悟?なんで?」 結衣「どうしちゃったの?…健」 声を殺す。 この静かな空間がその言葉の意味を分かりやすくさせる。 文字通り、結衣は声を殺して呟いている。 静かなロビーから、反響。というものが無くなった様な感覚。声が響かない。それほど、結衣は声を殺していた。 結衣「………なんで悟なの?わかんない。…健、悟は………悟は」 結衣「もういないよ…」 蘇る反響。 結衣の最後の言葉。たった一言の為に反響が存在したかの様に、小さく。綺麗に響き渡る。 結衣は知っていた。 悟がもういないことを…。 健は知らなかった。 悟がもういないことを…。 結衣「どうしたらいいの…?健はどうしちゃったのかな…」 悟「正しいと思うことをすればいいよ」 結衣の頭の中に、悟の言葉が蘇る。 以前。二人で話してるときの、何気ない会話。何気ない言葉が…今になって結衣の頭の中に蘇る。 悟「正しいことなんて誰にも分からないんだから、結衣が正しいと思うことをすればいいよ。それが失敗したとしても、結衣が正しいと思ってることなら、その気持ちは相手に伝わるから。 俺や健には100%伝わる。失敗した後の事は、失敗した後で考えよう。俺も考えてやるからさ」 フラッシュバックというものだろうか。 一字一句。喋り方。悟の表情。結衣の気持ち。全てが鮮明に写し出されてるかの様に浮かび上がった。
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