短編小説~親友~

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健はいつの間にか走っていた。 「何か」を消し去ろうと、がむしゃらに走っていた。 健「くそっ!なんだこの感じは!悟はいるんだ!いるはずだ!確かにいたんだ!!」 いつもの帰り道。 いつもの歩道。 いつもの信号機。 いつもの交差点。 あの時の交差点。 あの時のトラック。 健「………っ!!」 悟「健!!!」 健は足を止める。 トラックが猛スピードで目の前を横切る。 特にクラクションもなく、ただ通り過ぎる。 健「…悟?」 結衣「健っ!!!」 振り返る健の目には、全力で走ってきたのだろう。汗だくで呼吸も荒くした結衣の姿が映った。 健「………………………結衣」 結衣「馬鹿……!あんたまで居なくならないでよ………!!!」 涙目で健を睨み付ける様に、しかしどこかホッとした様な表情で大きな声を出す。 健「……………ごめん」 その場で座り込む結衣。 健「ごめん、結衣。それは無理だ」 結衣「……………え…?」 健「思い出したよ。あの時の事。………やっぱりおかしかったのはお前だったぞ」 先程と売って代わり、遠慮がちに笑顔を見せる健。 結衣の目の前には、なにかスッキリした表情の、笑顔を浮かべてる健の姿と 優しく微笑んでる悟の姿があった。 結衣「………さ、悟…?」 結衣にも見える悟の姿。いるはずのない悟の姿が、そこにあった。 健「また助けてもらっちゃったな」 悟「…本当はもっと早く助けたかったよ」 健「………ありがとうな」 二人の間の「また」も、「もっと早く」も、意味があり。そして重かった。 結衣「………え、二人とも……生きて…」 健・悟「死んでるよ」
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