短編小説~親友~

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悟「結衣、俺はあの時、確かにトラックに轢かれそうになった健を助けようとした。でも情けない事に、一瞬遅くてね。助けに入った俺だけでなく、健も死なせてしまった」 健「お前を死なせたのは俺だよ。俺の不注意で悟まで巻き込んで…」 そう。健がこの交差点でトラックに轢かれそうになったところを、悟が助けに入り、結果二人ともトラックに跳ねられてしまった。 健も、本当はいないのだ。 結衣「なに…言ってるの?だって健は…」 悟「結衣も分かってるんだろ?健が死んでること」 結衣「………そんなこと…」 そんなことあった。 結衣は健も悟ももういないことは知っていた。ただ知らない振りをしていた。 事件から1ヶ月休んだ。 自分を騙し、健はあの時悟に助けてもらった。そう思うようにした。でなければ、自分がどうにかなってしまいそうだったから……。 健「まあ、俺は俺で、悟に助けてもらったんだって思い込んでたから、ここに留まっちまったんだけどな……」 悟「二人とも似た者同士だね」 健自身も、自分が死んでいると知らずに、その時を繰り返していた。 そして1ヶ月繰り返して、やっと結衣が見付けてくれた。見えないはずの自分を。そしてこうして知ることが出来た。真実を。 結衣「………やっぱり…健も悟も…もういないんだ…」 健「落ち込むなよ。ベターだけど、ずっと見てるからさ」 悟「そうそう。二人とも、俺がいないと駄目だからね」 結衣「………なにそれ…意味わかんない…」 三人はいつもの会話をした。 一人は寂しそうに、一人は安心した様子で、一人は泣きながら…そんな中、三人はいつもの様に会話をした。 結衣「…私達…いつまでも一緒だよね?」 健「ああ、当たり前だ」 悟「ちゃんと見守ってるよ。俺らの分まで幸せになってね」 結衣「うん………。今まで、ありが…」 悟「今までありがとう。はやめなさい。結衣」 結衣の言葉を遮る。 悟の言葉には、もうそれ以上言わせない。そんな意味も込められている。 健「俺達は今でも親友だ。これで終わらねーよ」
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