短編小説~親友~

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結衣「…うん。私、二人の分まで生きるよ…!」 健「そうじゃなきゃ困るっつーの」 悟「…これで俺らも安心だ。………こういうのって本とかで読んだことあったけど、本当なんだね」 悟と健の姿が薄れていく。透けていく。より、透けていく。 健「役目を終えた。悔いなし。だな」 結衣「え、嘘!もうお別れ!?やだよ…もう少し……!?」 健の身体に手を伸ばす。 しかし手はすり抜け、体重が前方に傾いたため、地面に倒れ込む形になる。 悟「結衣、バイバイ。さよなら」 健「じゃあな。結衣。次会うときは死んだときだろうが、その時は幸せな楽しい話をしてくれよ?」 二人は笑っていた。透けていく身体で、本当に安心したように、笑顔で消えていく。 結衣「………ぅん」 結衣は地面に倒れたまま、起き上がらず、消えていく二人も見ず、ただ二人の言葉に短く答えただけだった。 時が経ち、大学入学式前日。 3月31日。大学の入学式前日で、お盆まではまだ先だと言うのに、一人の女性が墓参りに来ていた。 掃除は小まめにされていて、特別汚れは無いように見えるが、周りの雑草を綺麗に取り、念入りに掃除をしている。 女性は掃除に納得したのか、一人で頷き、墓の前で手を合わせた。 結衣「明日から大学生だよ。新しい環境での生活。一人暮らし。初めての事ばかりで、不安もあるけど、見守っててくれてるんだよね? ………たまにね、二人がいたら…って思うときもあるの。でももう目を背けたりしないよ。二人から教えてもらったから! 悟。健。しっかり見ててね?私は元気だよ」
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