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「なー、土日ヒマ?」
「ヒマじゃけどヒマじゃない」
「なんじゃそれ。どうせヒマじゃろ?」
「俺ら一応受験生じゃろうが。俺はたぶん推薦もらえるけど、シュン、そんなんでどうするん?」
高3の夏休み明け。俺たちの通っている高校の進学組は、推薦で大学を決めるヤツがほとんどだった。普通にテストを通過して、普通に過ごしていればどこかしらの推薦はもらえる。つまりシュンはいろいろ普通じゃなかったというわけで、その分のツケがこの時期回ってくるっていう……ま、自業自得なんだけど、大した遊び場もないこの島にいて、それだけ勉強ができない方が不思議だ。
「秋になったら本気出すけぇ大丈夫!」
「9月は秋じゃろ」
「だってさ、今週逃したら、たぶんもう海入れんようになるし」
深刻そうに眉を寄せてつぶやいたシュンに、一瞬ハッとさせられた。
たしかに、朝晩は涼しく思えるようになってきた。メジャーな海水浴場は先週で営業を終了している。その辺の浜で泳ぐにしても、今週末が最後になりそうだった。
「……しょうがねぇな。土曜は模試じゃけ無理じゃけど、日曜なら」
海なんて、いつだってそこにある。また夏になったら入れるじゃないか。お互いにそうは考えられなくなっている。今年が最後だって焦る気持ちが、俺たちの間をふわふわ漂っている。来年の春にはきっと、離れ離れだ。
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