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「お前マジでやばいで」
「これから本気出すって言うたじゃろ?」
昔から数字に弱かったシュンの数学力は、目も当てられたもんじゃなかった。入試でよく使うだろう公式を書き出してやりながら、ため息をつく。
「こんなん基礎の基礎じゃってわかっとる?」
「1年の頃見た気がするけぇ、そうなんじゃろうねー」
「はぁ……」
「くんちゃん、ため息ばっかりついとるとシアワセが逃げるで?」
「誰のせいよ?」
たぶん通過できる推薦入試を控えた自分よりも、こいつを優先させなくちゃまずい。
どこに行くにしても、進学イコール本土だ。シュンを島に残しては本土に行けないっていうよくわからない使命感みたいなものが、俺の中にあった。
「ほんまにハードル高いのぅ」
「ハードルは高いほうが燃えるじゃろ?」
「何の話じゃボケ」
「くんちゃんひっど!」
大げさに顔を覆ってみせたシュンの頭を軽くはたいて、俺は考えた。シュンの学力不足は、冗談で済ませられるレベルじゃない。どうやって教えたらいいんだろう。
「……とにかく俺は、お前を連れて島を出るんじゃけ!」
勢いのままに口走ってしまってから、なんか変なことを言ったなって気がついた。
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