シトラス環状線

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「くんちゃん……なにそれ……」 「っ! 言うな! 全然ちがうし!」 「駆け落ち? プロポーズ?」 「バカ! ちがうっつっとろーが!」 顔が熱いのが自分でもわかった。本当に全くそんなつもりはなかった。単純に、言い方を間違えただけ。シュンだってそれをわかって茶化している。そこまで理解しているのに、なんでこんなにムキになって否定しなきゃならないんだ? 「くんちゃんって、石根 邦友(イシネ クニトモ)だっけ? イシネ シュンかぁ。なんか良くない?」 「名前忘れんなし、で、なんでお前が嫁に来る設定なんじゃ」 「くんちゃんでずっと生きてきたけぇ、たまに忘れるんよ。別にくんちゃんがお嫁に来てくれてもええで? 瀬戸の花嫁、歌っちゃるで?」 「だまれボケ」 「まぁええけどさぁ。こんだけずうっと一緒におって大丈夫ってことは、一生一緒でもやって行け……」 「はぁーもう……。勝手に言うとれ!」 こんなにネタにされるとは思わなかった。シュンのヤツ、食いつきすぎ。二人とも普通の男子高校生なんだから、どっちが嫁でも気持ち悪い。 でも……。よく考えたら、シュンの言うことにも一理あると思えた。 ずうっと一緒。本当だ。指折り数えるくらいしかいなかった島の同級生の中でも、ここまで一緒にいるのはシュンだけだった。
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