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三月、私の心配を他所に息子は結婚式を迎えた。
浩人が笑いながら私を見る。
「こう言う事は縁さえあればトントン拍子に話は進むものだ」
そう言って。
結婚式には兄も来てくれた。
勿論くるみさんと二人で。
あの日私と別れた後直ぐに、兄は彼女の実家に行ったらしい。
追い返そうとする彼女の両親に土下座までして結婚の許しを願った。
それを見た彼女は兄の横に並ぶように両親に頭を下げたと聞いた。
兄は祝いの品を私に手渡しながら、入籍だけを先に済ませ彼女の誕生日に式をあげると嬉しそうに言った。
その後は実家の呉服屋を継いでくれると私の両親が目を細める。
そうそう息子の彼女だが、実は私の高校の同級生、彩名の娘さんだった。
そう言われたら昔の彼女に似ている気がする。
そしてその彩名は、一度は夫と別れたものの、この結婚の為に何度も元の夫と会ううちによりが戻ったらしい。
彼女はこの式が終わった後香港に帰ると言っていた。
美奈子が笑いながら私に言う。
「ほらね、こう言う事が有るから、男と女は分からないのよ」
そう言って笑った。
本当に分からない・・
そして難しい。
でもだから報われたときは幸せなのだ。
私は隣の浩人を見つめる。
「浩さん・・
ありがとう。
これからもお願いします」
そう言うと彼は難しい顔をする。
「それは無理かな・・
僕ももう年だ、いつまでも君を守れない」
「ダメよ、私は貴方が居ないと生きて行けない。
例え寝たきりになっても私が死ぬまでは生きていて、約束よ」
私の言葉に浩人が笑う。
「仕方ない、頑張ってみるよ」
そう言って私を見る。
私はまた浩人に甘えながら息子達を見ていた。
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