息子の恋人

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「ねえあなた、あの子、もしかしたらゆうと何も無いのかもしれないわ」 「ああ、そうみたいだね。 僕がゆうに聞いた話じゃ終電に乗り損ねたから連れて来たと言ってた。 まあ、男と女だ、先は分からない。 ただ、彼女はゆうの事が好きだと思う」 「あなたも?私もそう思って彼女を見てたの」 「まあ、暫くは様子を見よう。 あまり煩いと、纏まる話も壊れる事もある。 君も黙って見守るんだよ」 「分かったわ、貴方の言う通りにするわ」 そう言ってはみたが、心の中は絶対にあの子をゆうの嫁にほしいと思っていた。 二人が早めの夕食を頼んだと聞いて私達も食堂に向かった。 浩人が二人だけにしたらと言ったが、心配で堪らない。 様子を見るだけだからと言って彼を急かせた。 夕食に来た彼女は、やっぱりとても可愛らしい。 少し冷たい息子とは違い、私の話も楽しそうにあいづちをうつ。 「またちょくちょくいらっしゃい」 そう言うと嬉しそうに笑った。 「そうだわ、化粧水やクリームなんかは有るの?」 そう聞くと泊まるつもりでは無かったからもうないと言う。 (そうだわ、ここでゆうの株を上げてあげるチャンスだわ) そう思って息子に化粧水を作ってあげては?と言う。 息子は今時の若い女性はあんなの使わないと言ったが、あの子は嬉しそうに話を聞いた。 浩人がテーブルの下から手を掴む。 (やめなさい)そう言っていると分かる。 仕方ない、彼との約束だもの・・話をそこまでにして食堂を出た。 「麗華ダメだよ、僕達は見守るだけにしないと」 「分かってる、でももどかしくて・・」 「気持ちは分かるよ、でもゆうに任せるって話し合っただろう?」 浩人は笑いながら私を見ていた。 「ねえあなた、私達の時も親たちはこんな思いをしてたのかしら?」 「さあ、僕の両親はあの時もう亡くなっていたから。 でも、君のご両親はそうだったかもしれないね」 上の兄の事故死の後、下の兄が家を出て私も浩人に嫁いだ。 二人だけになった両親はどんな思いで私達の事を見ていたのだろう?改めてそう思った。 「麗華、久し振りに実家のご両親と食事でもしようか?」 浩人が私を覗く。 「そうね、そうしましょう」 そう言って彼の膝に甘えた。 浩人はそんな私の髪を撫でる。 結婚前にもこうして髪を撫でてくれた。 「ありがとうあなた、私をお嫁さんにしてくれて」 浩人は笑いながら私を見る。
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