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合コンは会社の近くに新しくオープンしたばかりのお洒落なパブでする事になった。
残った仕事を片付けて少し遅れて店に入った。
見ると、僕などいなくても結構盛り上がり楽しそうだ。
店のボーイに頼み今村を呼んだ。
「悪いが上手くいってるなら帰っても良いかな?」
今村は後ろを振り返る。
女性側も一人来られなかったから構わないが、お前は良いのか?と聞いた。
僕は構わないと答えほっとして店を後にした。
クリスマスも近いし店も新しいせいか、BGMも僕には煩く聞こえた。
店を出て考える。
家には遅くなると言ってしまったし、帰っても食事は無い・・
(せっかくだ、飲んで帰るか)
夕食は近くの蕎麦屋で済ませて行きつけのバーに向う。
いつもの席に座って水割りを頼んだ。
「今日はいやに静かだな」
マスターが僕を覗く。
「うん、合コンに誘われたけど何だか気が乗らなくて・・
丁度相手も一人抜けたから僕も失敬して来ちゃったんだ」
そう言ってグラスを受け取った。
「祐は一人が好きそうだ」
マスターは他の客のカクテルを作りながら僕を見て笑った。
「別に一人が好きって訳じゃないですよ。
そりゃあ彼女とかいたらって思う事もあるけど・・
何ですかね、僕面倒くさがりでいつも優しくないって振られるんです」
マスターの手の空くのを待ってお代りを頼む。
「そんなに良い男なのに、近頃の女性は見る目が無いね」
そう言いながら僕の水割りを作る。
「男も女も顔だけじゃないですからね」
僕はマスターが渡してくれたグラスを揺らす。
カラカラとグラスの中で揺れる氷の音が好きだった。
ドアを開けて4人組の客が入って来た。
カウンターだけの店には残りの席が3つしかない。
マスターが客に断りを言う。
「あっマスター僕はそろそろ」
そう言って席を立つ。
見知らぬ客は僕に(すみません)と言って頭を下げた。
「いいえ、僕もこの店が好きで通ってます。
いっぱいで座れないとがっかりしますから」
そう言って店を後にした。
ゆっくり歩いてタクシーを捜す。
年末の繁華街はこの時間交通規制が敷かれ、タクシーが中々入って来ない。
電車にするかと公園の横の近道を選んだ。
近頃は物騒なせいか公園の中の照明が前より明るく感じる。
最寄り駅への近道とあってこの中を歩く人もいたが、今夜は寒いせいか僕のようにゆっくりと歩く人は少なかった。
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