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がっかりしたような彼女の顔を見ていると、急に可哀相にになった。
「行きたいの?香港・・」
本当に今夜の僕は少しおかしい・・
初めて会ったばかりで何処の誰とも知れないのに、彼女の事がほっておけない。
「えっ?」
「行こうか?勿論今直ぐは無理だけど・・」
「本当?」
「うん、いいよ、年内は仕事が忙しいけど・・
そうだな・・中国の旧正月位なら今から言えば休みが取れると思う」
「本当?本当に本当?」
彼女は嬉しそうに僕を見た。
「じゃ、休みが取れたら連絡してね」
そう言うと僕の携帯の番号を聞く。
自分の携帯から掛けて番号を登録すると僕にも登録してと言った。
「飛行機のチケットは私が買うわ。
日にちが決まったら一緒に旅行社に行きましょうね」
そう言って僕の手を握る。
気が付くと、二人で香港に行く約束が出来上がっていた。
「ところで今夜はどうするの?
何処まで送ればいい?」
「う~ん、祐人今夜暇?」
「暇って、もう帰るだけだけど・・」
「祐人、ゲームとか好き?」
「ゲーム位少しはやるけど」
「私、今夜は祐人と一緒にいたい」
急に彼女がそう言う。
僕は驚いて彼女を見た。
「あっ、新手の詐欺か美人局とでも思った?」
美人局って古い。
何処で覚えたんだか・・
でもそれに近い事は思った。
「嫌ならいいわ。
駅まででいい・・」
僕は不安になる。
「僕が一緒にいなかったら他の男を捜すの?」
思わずそう聞いた。
「あはっ、嘘、やきもち?」
彼女にそう言われ気付く。
確かにやいてる。
もしかしたら僕はさっき逢ったばかりの、この可笑しな娘にひと目ぼれをしたのかもしれない・・
彼女を一人残して帰る事が出来なくなっていた。
「いいよ。
一緒にゲームでも何でも」
彼女は笑いながら僕を見つめた。
「祐人・・優しいのね」
僕はその言葉に驚く。
今まで女性に優しいと言われた事は一度も無かったからだ。
取り合えず駅前のゲームセンターで彼女の言う通りゲームをする。
若い彼女は何でもできて、僕は殆どのゲームで彼女には敵わなかった。
午前0時を過ぎてゲームセンターの営業が終わる。
駅に向ったが終電も出たばかりだった。
気が付くと息が白い。
彼女を見ると寒そうにしていた。
「君の家遠いの?
僕、明日も仕事だからぼちぼち眠らないと・・」
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