別れ話は突然に

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「どうも」 「褒めてないし」 最低 「痛くも痒くもない」 へぇ… 「悪いけど、あたし今日残業しないから」 「あ、俺現場から直帰するから」 「はぁっ?!」 午後イチで出て行くくせに、直帰ってどういうこと? キーボードを叩く手が一瞬止まる 「寂しい?」 顔を上げ、笑ってあたしを見る表情がいやに爽やかで 一瞬胸がキュッと締め付けられた 「冗談」 一瞬でもこいつが気になったなんて認めたくなくて 鼻で笑い一蹴すると、唇を尖らせ同意するように何度も頷く奴が視界に入った 「俺、油木さんと仲良くやってけそう」 「は?」 どこが? 「お断りさせていただきます」 打ち出した書類を突き出し、奴の顔を視界から隠す 「嫌でも、そのうち仲良くやっていくことになるよ」 あたしの手から書類をスルッと抜くと『ありがと』と微笑み、意味不明な言葉を残して鞄を手に事務所を出て行った
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