越えた一線

33/34
前へ
/299ページ
次へ
「ずっと………。ずっと我慢してたんだ。こんなに近くに居るのに、冗談じゃなきゃ抱き締めることもキスすることもできない。いっそ襲っちまおうかと思ったこともある」 「なっ…」 「何でか分かるか?」 潤んだ瞳にただ黙って首を横に振った 「嫌われるのが怖かったんだ。同じ屋根の下に住んでるのに、関係が壊れて二度と近寄れなるかもって思ったら、本気で手なんて出せなかった。だから、もう我慢しねー」 あたしの両手首をひとまとめにして頭上で拘束する スカートの裾からするりと滑り込んでくる長い指 「やっ、ダメッ!」 下に二人が居てるのに─── くすぐったさと恥ずかしさで身を捩り、半ば本気で抵抗した 「ダメ?」 スカートから手を引き抜いた彼が、切なげな顔をするので思わず言葉に詰まる けれど、次の瞬間─── 首から外したネクタイで、拘束したあたしの両手を縛り上げた
/299ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3232人が本棚に入れています
本棚に追加