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「別にいいわよ。会社には仕事しに来てるんだから」
副社長の息子だから何だっての?
「あたしは、他の人達みたいにきゃあきゃあ言わないも───」
「それはありがたいね」
突然背後から声を掛けられ、驚きのあまり背筋が伸びる
振り返ってみると、トレーを持った例の男があたしの斜め後ろに立っていた
「隣、いい?」
「は?」
思わず漏れた棘のある単語
そして返事もしていないのに、奴は腰を下ろすとトレーに載ったかつ丼のどんぶりを手に勢いよく掻き込んでいく
「意外…。柳生くんも、そんな庶民的なの食べるんだね」
愛莉が目を見開いて奴を見る
「俺も普通の人間だし。コンビニとか牛丼屋とか、普通に行くし食うよ」
普通の人間って………
「油木(ゆき)さん」
「何でしょう?」
奴に名前を呼ばれたのでバカ丁寧な言葉で返事をし、満面の笑みで隣を見ると、奴もこれ以上ないほどの爽やかな笑顔であたしを見ていた
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