その男、要注意人物につき

別れ話は突然に

『ん』

時間を置かず、短い返信

…怒ってるのかな

健人のことなんてすっかり忘れていたくせに、久し振りに連絡を取った途端急に気になってきた

早く帰ろ

スマホを握り締め、営業課へと急いだ

「あ、油木さん」

課内に入ると奴が手を上げ、あたしの名前を呼んだ

上げた手で大きく手招きしているので、皆の視線があたしに集まる

「大きな声出さないでよ。皆に見られたじゃない」

小走りで席に戻ると皆に聞こえないよう小声で怒鳴り、向かい側に座って書類に目を落とす奴の頭頂部を睨み付けた

「別に悪いことしてるわけじゃないんだし、気にすることねーだろ」

ぶっきらぼうな声が返ってくる

「人と話す時は、顔ぐらい上げなさいよ」

「へーへー、そりゃあ悪うござんしたね」

ちっとも悪びれない様子であたしを一瞥したかと思うと、また書類に目を落とした

「………アンタ、見た目と違って性格ブスね」

話してるとイライラするから、パソコンを立ち上げ社用車の使用許可願いの電子申請手続きにかかる