第1章

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   そして次の瞬間、画家Bが燃えだしたり、小説家Aがコンクリートの    壁を突き破って、飛んで行ったり、お互いに攻撃を始める。    すると、石化した総理大臣が、ゆっくり元に戻る。 総理大臣「無防備にあなたたちをここへ呼んだと思いますか?」    画家Bの火も消え、傷が癒える。    飛んでいった小説家Aも戻ってくる。 総理大臣「最高のボディーガードがここにはいます。妙なことは考えずに、お 願いします。現代を熟知している、あなたたちのお力を貸してください」 膝をついて、頭を下げる総理大臣。 側近たちも総理を止めるのではなく、同じように膝をつき、頭を下げる。 漫画家C「………」    尋常な事態ではないことを悟る芸術家たち。 ○渋谷    朝になったり、夜になったり、雨が降ったり、雪が降ったり、魚も降っ てきたりで、一向に安定しない天気。    行き交う人々は皆、若く、容姿端麗で同じように見える。    カメラを持った陽介とクマが歩いてくる。 陽介「なにか、スクープしないと……」 クマ「君は何で、姿を変えないんだい?」 陽介「別に……」 クマ「案外、ナルシストなんだな」 陽介「そっ、そんなんじゃないさ。ただ……。もう関係ないだろ、そんなこと。 それよりスクープ、スクープ」 クマ「自分では一面になるようなことができないからって、人の事件を奪おう とするとはね…」 陽介「いいだろ。誰かが取材しなきゃ、一面にならないんだから」 クマ「まあ、おまけだな」 すると、道玄坂のラブホテル街の方から爆発が起こる。 震える陽介。 陽介「……行かなきゃ」    恐怖を抑え、走り出す陽介。    ぴょんぴょん跳ねるようについていくクマ。 ○ラブホテル    眠りから覚めた男女たちは、油断して本来の容姿に戻っている。    老人の男性と太っている中年女性。    ×   ×   ×    頭の薄い中年男性と老婆。    ×   ×   ×    少年と女装しているオカマ。    ×   ×   × 全員揃って「だましたな!」    ホテルの外壁は爆発で吹っ飛び、偽りの自分を演じていた老人男性、中    年女性、中年男性、老婆、少年、オカマをはじめ、30組くらいのカッ    プルが戦い始める。ある者は、腕をマシンガンに変え、ある者は雷を落    とし、ある者は機械を身にまとい、ただただ争う。
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