第1章

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○空港・外    陽が降り注ぐ、のどかな日中。    到着ロビーの外で、太陽と睨めっこするように煙草を吸っている青年、    三島陽介(28)。    腕時計で時刻を確認し、到着ロビーに入って行く。少し面倒くさそう。 ○空港・到着ロビー    到着出口から、一際大きなトランクケースを持った陽介の母、三島佳苗    (54)が出てくる。    そのトランクケースを見て、不思議そうな陽介。 佳苗「ありがとうね。陽ちゃん。迎えに来てくれて。東京もえらい暑いねんな」 陽介「なんで、こんな大きなトランクケース持ってきたん?」 佳苗「なんか面倒くさくなって、使いそうなもの全部入れてきたんよ」 陽介「相変わらずやな。まったくもう」    明らかに面倒くさそうな顔をしながらも、トランクケースを持って、そ    そくさと駐車場へ向かう陽介。    通行人にトランクケースがぶつかってしまうが、まったく気付かない陽介。 ○空港・屋内駐車場    やや古めのセダンの自動車に、大きなトランクケースを積み込もうとす    る陽介。 陽介「入るかな、これ」 トランクルームにトランクケースがピッタリと収まり、少し驚く陽介。 陽介「ちょうどよかったな、これ。あと1cmでも大きかったら、入らんかっ たで」 佳苗「それはラッキーやね。飛行機で読んだ雑誌の占い通りやわ。今日はお母 ちゃん、えらいツイている日やて」 陽介「いいから、はよ乗って(助手席のドアを開ける)」 佳苗「ほんま、頼もしくなったなあ、陽ちゃんは」    佳苗は、後部座席のドアを開けて、車に乗り込む。 陽介「なんで、後ろにのるん?」    陽介、仕方なく助手席のドアを閉める。    うれしそうに後部座席に座る佳苗。 ○空港・屋内駐車場出口    陽介の運手する自動車が出てくる。    陽介の真後ろの席に座っている佳苗。 ○車内    会話がなく、淡々と運転する陽介。    やがて赤信号で、停車する。 陽介「なんで、また急にきたん?」 佳苗「あんたの顔が見たくなったんよ。急に」 陽介「気持ち悪いなあ」    青信号になり、再び発進する。 陽介「で、いつ帰んの?(バックミラーで佳苗を見る)」 佳苗「ちゃんと、前見て運転せんね。怖いわ、まったく」 陽介「はいはい、わかりましたよ」 ○人気のない道を走る陽介の自動車    赤信号になり、停車する。 ○車内
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