第1章

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陽介「(ぼんやりパソコンの画面を見ながら)一番会いたい人に会える…か」    部屋の隅っこには、ダイエットマシンのロデオボーイが置かれてある。 ○駅・ホーム    通勤時間で、大勢の人たちが電車を待っている。    その中に、陽介もいる。    間もなく、急行電車がやって来る。    乗客を乗せて、発進する電車。    急行電車がホームから出ると、電車に乗っていない陽介の姿が見える。    ぼんやり電車を待つ陽介。    間もなく、各駅電車がやって来る。    乗客がほとんどいない各駅電車に乗る陽介。 ○電車・中    ボディビルダーが取り扱われている肉体改造の中づり広告。    下腹を気にする陽介。 陽介「俺にはムリだな……」    鞄から「海辺のカフカ」の上下巻を取り出し、少し迷ったあとで、上巻    を選び、適当にページを開いて読み始める。 ○花屋    まだ開店前で、若い店員の女性が準備をしている。    陽介が入って来る。    「ネモフィラ」の花を数輪準備してくれていた店員。    陽介はお代を払い、花を受け取る。 ○小学校・校門    ネモフィラの花を持って、陽介がやって来る。    同僚の教師と会うと、にこやかに挨拶する。 ○小学校・教室    教室の花瓶にネモフィラの花を活ける陽介。    黒板に『今日の花言葉』と書かれたところに、「私はあなたを許す」と力    強くも、優しい字で書く。 ○小学校・職員室    朝礼が開かれている。 校長「近頃、コンビニエンスストアで子供たちの万引きが増えているそうです。 くれぐれもウチの学校から万引きで捕まる子がでないように注意してくださ い」    「わかりました」と声を揃える先生たちだが、陽介と、カウンセラーの 工藤梢(38)は不快な表情。 梢「万引きで捕まる子ではなく、万引きする子がでないようにと言うべきで は?」 教頭「また、上げ足とって。そういう意味でおっしゃったんだよ。校長は」    すかさず、校長を擁護する教頭。    「そうだ」と言わんばかりの校長。 梢「普段からの考えが発言にはでるものです。ご注意ください」 教頭「校長をカウンセリングしてどうするんだね。君の仕事は子供たちの…」    教頭の説教が始まるそうになると、職員室から出ていく梢。    あとに続く陽介。 ○小学校・廊下
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