第1章

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   すれ違う子供たちと挨拶を交わしながら歩く陽介と梢。 陽介「知ってますか?最近、校長先生、とっても高い漢方の胃腸薬を飲み始め たそうですよ」 梢「いい気味よ」 陽介「おかげで、僕は、胃薬を飲まなくてよくなりました。梢先生がガツンと、 言ってくれますからね」 梢「あなたの、その気の弱いところ、損するわよ。関西人のくせして」 陽介「それは偏見ですよ。でも、梢先生を見ていると、なんだか本当にそんな 気がします」 梢「あのね、私はそんなに気が強いほうではないのよ。ただ、自分の考えを、 ごまかしたくないだけなんだから」 陽介「それができないんですよ。たいていの人は」 梢「私からしたら、教室に花を活けるほうが、よっぽど恥ずかしいけどね」 陽介「最初は花屋さんに行くのが恥ずかしかったですけど、子供たちに知って ほしんです。教科書に載っていなくて、塾でも教わらないことを。それに、 あれは実は…」 梢「でも、三島先生、教師続けるなら、考えすぎは禁物だからね」    梢の視線の先には、教室の前で震えている教師、大田充(25)の姿。 陽介「(少し間をとって)わかってます。よく…」 ○小学校・教室    陽介が入って来ると、慌ててマンガ本を隠す男の子、森田和久(10)、 佐野陸(10)、佐々木康太(10)。 陽介「学校にマンガを持ってきちゃいけないの知っているだろう。次、見つけ たら没収だからな」 陸「なんで、マンガを持ってきちゃいけないの?」 和久「そうだよ。いいじゃん、学校で読まなければ」 康太「そうだよ。そうだよ。先生だって、いつも本持ってるじゃん」 陸「本はよくて、なんでマンガはだめなのさ」 陽介「それは、マンガより本のほうがおもしろいし、マンガより本のほうが勉 強になるし、マンガより本のほうが学校には似合うからな」 和久「ワンピース、バカにするなよな」 陸「マンガだって、勉強になりますよーだ」 康太「そうだよ。わかりやすいし」 陽介「いいか、これからお前たちが生きていく世界は、とってもわかりにくい 場所で、誰かヒーローが救ってくれるようなものではないんだ。とにかく、 学校には持ってこないように」 和久「だから嫌いなんだよ。大人は。特に教師なんて、最悪」    頷く、康太と陸。    すると、吉田葵(10)が走って来て、和久にドロップキックする。    大きく蹴飛ばされる和久。    和久に駆け寄る康太と陸。
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