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すれ違う子供たちと挨拶を交わしながら歩く陽介と梢。
陽介「知ってますか?最近、校長先生、とっても高い漢方の胃腸薬を飲み始め
たそうですよ」
梢「いい気味よ」
陽介「おかげで、僕は、胃薬を飲まなくてよくなりました。梢先生がガツンと、
言ってくれますからね」
梢「あなたの、その気の弱いところ、損するわよ。関西人のくせして」
陽介「それは偏見ですよ。でも、梢先生を見ていると、なんだか本当にそんな
気がします」
梢「あのね、私はそんなに気が強いほうではないのよ。ただ、自分の考えを、
ごまかしたくないだけなんだから」
陽介「それができないんですよ。たいていの人は」
梢「私からしたら、教室に花を活けるほうが、よっぽど恥ずかしいけどね」
陽介「最初は花屋さんに行くのが恥ずかしかったですけど、子供たちに知って
ほしんです。教科書に載っていなくて、塾でも教わらないことを。それに、
あれは実は…」
梢「でも、三島先生、教師続けるなら、考えすぎは禁物だからね」
梢の視線の先には、教室の前で震えている教師、大田充(25)の姿。
陽介「(少し間をとって)わかってます。よく…」
○小学校・教室
陽介が入って来ると、慌ててマンガ本を隠す男の子、森田和久(10)、
佐野陸(10)、佐々木康太(10)。
陽介「学校にマンガを持ってきちゃいけないの知っているだろう。次、見つけ
たら没収だからな」
陸「なんで、マンガを持ってきちゃいけないの?」
和久「そうだよ。いいじゃん、学校で読まなければ」
康太「そうだよ。そうだよ。先生だって、いつも本持ってるじゃん」
陸「本はよくて、なんでマンガはだめなのさ」
陽介「それは、マンガより本のほうがおもしろいし、マンガより本のほうが勉
強になるし、マンガより本のほうが学校には似合うからな」
和久「ワンピース、バカにするなよな」
陸「マンガだって、勉強になりますよーだ」
康太「そうだよ。わかりやすいし」
陽介「いいか、これからお前たちが生きていく世界は、とってもわかりにくい
場所で、誰かヒーローが救ってくれるようなものではないんだ。とにかく、
学校には持ってこないように」
和久「だから嫌いなんだよ。大人は。特に教師なんて、最悪」
頷く、康太と陸。
すると、吉田葵(10)が走って来て、和久にドロップキックする。
大きく蹴飛ばされる和久。
和久に駆け寄る康太と陸。
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