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プロローグ
青年は、激痛に顔を歪め気を抜けば遠のいていく意識を無理矢理繋ぎ止める。
眼下には、独裁者と呼ばれ恐れられていた暴虐非道なる王が、這いつくばりしわがれた顔をクシャクシャに歪ませ必死に生にしがみつこうとしている。
その王の無様な姿を、鼻で笑い飛ばしさながら処刑人の様に刃を首筋に宛てがいながら言葉を紡ぐ。
「卑劣なる王よ、貴様をこの国の民草の願いにより断罪する。」
「・・・キ・・・サマッ・・・!」
「さらばだ。」
王は、青年の言葉に顔を赤くし口を開きかけるがそうはさせまいと青年が、王の首を跳ね飛ばした。
王が、永遠の眠りに就いたのを確認して安堵の息を漏らす。
「・・・終わったか。」
その呟きと共に青年は、崩れ落ちるようにその場に倒れ込む。
既に青年の身体は、ボロボロであり今まで立てていた事は奇跡的だった。
どんどん霞む視界に青年は、今まで自分が歩んで来た人生を振り返りろくでもなかったなと柄にもなく口元を歪ませた。
「こんな俺にでも、次の来世っつうもんが来るって言うなら。もうちょっとマトモな人生にしてくれ、な?神様。」
これまた柄にもない事をボヤキながら、異世界[ルーテシア]の英雄、暗殺者『フェンリル』は、来世に夢を馳せつつその双眸を静かに閉ざした。
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