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大学を卒業して早1年がたとうとしていた。
銀行帰りに街を散歩していると、コンビニの前に高校生くらいの女の子が立っていた。
彼女はどうも困っているようで、三枚目の僕的には声をかけたくなってしまった。
「ねぇ、君、どうしたの?なにか困ってるのかい?僕で良ければ何でもするよ?」
僕がそう言うと、彼女は
「コンビニで、今晩の夕食を買おうかと思ったのですが、お金が足りなくて。」と、言った。
おぉぅ、この超平和なご時世にそんなことがあるとは!飯に困っている人はなんとしてでも助けなければ!でないと僕の様なガリ細野郎になってしまう!
「弟5人と妹13人、両親に両親の祖父母の分、すべての買出しを頼まれてたのにっ!」
コンビニの前で泣き出した。
え、ここで泣かないでよ。
僕が泣かせたみたいじゃん。
「全員分の夕食が必要なんです。さっき何でもするって言いましたよね?なので、
お金、ください?」
ストレート!どストレート!言いたいことだけ、どストレート!
しかも、お金、くださいって、返す気ねぇだろ、こんちきしょう!
「さっきの言葉なんですけど、」
と、彼女はかじかんだ指先で、鞄からスマートフォンを出した。
「録音しちゃいました!テヘペロ」
『ねぇ、君、どうしたの?なにか困ってるのかい?僕で良ければ何でもするよ?』
えぇ!!何してんの!?僕が来ることわかってたの!?
今どきの高校生が怖ぃよぉ!!
「お金、くれますよねェ(`・∀・´)ニヤッ」
仕方ない、訴えられたらたまらない!
友達の視線が痛くなるのだけはなんとしてでも避けなくては。
「わ、わかったわかったわかった。わかった。?君の言いた事はわかったから!!」
仕方ないので、コンビニに彼女と一緒に入る。
5分後ォォー
コンビニの商品は、あらかた買い尽くされた。僕の財布の中身が0になる代償として。
財布さんの中身は後8円。駄菓子くらいしか買えねぇ。
これ、ちょっとした詐欺じゃね?と思いながらコンビニを出る。
「ありがとうございますゥ!!これで、我が家は安泰でスゥ!!」
ウザっ!
そして彼女は、去り際に
「あ、本当は私、一人暮らしでした!!」
シュタッ!!と、彼女はものすごい速さで去っていく。
「こんちきしょぉぉぉぉぉぉぉ!!」
冬の寒空に哀しい叫び声が響いていた。
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