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少しの沈黙があって真田が口を開く。
「榊さんて、若いころ留萌署に居たと聞いたことありますが、その頃に堂場刑事部長と、もしかしたら接点があるのかもしれません」
その時、捜査本部より緊急無線連絡が入る。
「堂場刑事部長、搬送先の札幌中央医科大学病院にて緊急手術後意識回復。すぐに堂場刑事部長より指示。木村正一はシロ。榊栄一郎を被疑者死亡のまま送検する」
「榊栄一郎の自宅物置大型冷凍庫から、釣り餌や魚に埋もれた金山正道の冷凍された遺体発見。これまでの遺棄部位以外の全てつながった状態で発見!!」
初夏の札幌を揺るがした、連続バラバラ死体遺棄事件の真犯人は、犯人を知る人々すべてが何かの間違いだろう。心から間違いであって欲しいと全員が願う程、普段から温厚で心の広い裏表の無い誠実な人間であった北海道警察警視、札豊署署長榊栄一郎の犯行であった。
特に、署長を務めていた札豊署では、署員の刑事や制服警官、職員、全員が絶対に冤罪だからと道警本部に再捜査要請を懇願するほどであり、また長年榊自身が青少年更正に力を注いできた札東署では、榊によって更正したかつての不良少年少女達が、知人友人家族総出で数百人いや千人近い規模で集まり、札東署の前や道警本部前で榊栄一郎さんの冤罪を証明する会を立ち上げて、署名活動を行うほどだった。
ただし、第一現場から第七の現場木村正一自宅の物置そして最後の道警本部での堂場刑事部長刺傷までの全てのアリバイが無い事や自宅から遺体が発見された事が決定的となり、冤罪として晴れることは無くニュースや報道で知っただけの、榊を直接知らない全国の大多数の国民にとっては、表向きは善人を装い、警察官でありながら殺人を犯し、知人男性に罪をなすりつけようとして、最後に自暴自棄になって自殺した卑怯な男として記憶されることになる。
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