第四章 一九八〇年、留萌署刑事 榊栄一郎巡査 堂場剛弘巡査

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 榊は、多村の胸倉を掴んだ手を引くと敬礼をする。 「!!……失礼しました。本日より留萌署刑事課に配属された、榊栄一郎です」 「お、同じく。ど、堂場剛弘です。多村刑事の元で働ける事を光栄に思っております」 「榊だったな、おめえ短気な野郎だな。お前は刑事じゃなくてヤクザになったほうがいいんじゃねえか? して、お前は堂場だったな。モヤシみてえな体しやがって刑事勤まんのか?」 「すいません、目の前でこのおっさんが金払わず逃げようとして、俺が店員のおばちゃんの代わりに腕掴んだら手出して来たんでカッとなってつい」  榊が言い訳する。 「まあ、こいつはそのまま現逮して署に連れて行け。さっそく初仕事だな。俺ぁ飯食ってくるから、お前ら頼んだぞ」 「了解しました。けど多村さん俺ら署の中まだ知らないんで、どこに連れて行けば……」  榊はそういいつつ、中年男に手錠を掛ける。 「知らんわ。手前らで考えろ」多村はそういうと定食屋に向かう。    その後、急いで飯を掻き込み三十分ほどして、多村が刑事課に戻ると、広川が血相変えて近付いてきた。 「多村さん、どうしてあいつに任せたの? 取調室で、容疑者に手出して血まみれで大変さ」 「榊か? あのガキめ本当にわからん奴だな。わかった俺も行くわ」 「片方はヤクザだし、もう片方は文学青年みたいだし、もうとんでもないのが来ちまったよ」  広川がため息をつく。 「まあ、デカチョーも経験済みだが、俺の厳しい指導にかかれば何とでもなるわい。ガハハ」
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