第四章 一九八〇年、留萌署刑事 榊栄一郎巡査 堂場剛弘巡査

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 そして、榊は持ち前の身体を使った行動力で、昼夜のみならず徹夜も苦にせず張り込んだり、数々の現場に粘り強く当たり、窃盗犯や強盗犯を捕まえたり、全国指名手配中の連続殺人犯が天売島に潜伏しようと留萌港のフェリーターミナルに来た所を発見し逮捕するなど大きな実績を上げていった。  堂場は目立った実績はないが、持ち前の頭脳を生かし、朝鮮語やロシア語を習得し留萌に出入りするソ連人ビジネスマンと独自の人脈ルートを築き、留萌署管内の暴力団組織の薬物や銃器の密輸ルートの捜査に当たっていた。  休日も多村から学び吸収する為に休みが会えば、二人は多村の趣味である釣りに付き合い三年たった今では榊も堂場もかなりの釣りの腕前になっていった。  そして、更に一年が経過した一九八四年に多村は定年を向かえる。  しかし、榊と堂場は既に一人前どころか道警内でも留萌署の名コンビ若手刑事として有名になっていた。  多村の送別会の日、最後四次会は榊と堂場と多村の三人だけとなり、始めて二人は多村から褒められた。 「お前らは、最初はとんでもねえガキ二人だったが、今では俺の長い刑事人生の中で一番の弟子二人だ」    最後四次会のスナックを出て多村を見送る時も、榊と堂場は涙が止まらなかった。  その翌日、榊と堂場にとってその後何十年にも渡って大きな転機、遺恨を残す事件が起きる。
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