第四章 一九八〇年、留萌署刑事 榊栄一郎巡査 堂場剛弘巡査

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「ところで、簗田? お前の所のガキんちょ幾つになった?」 「はい、長男の健晃は九歳です。実はもう一人居て淳という長男は七歳になりました」 「何で長男が二人いるんだよ? 妾の子か?」 「そうです、淳は愛人が一人で育てるって言うんで認知はしてませんが養育費だけ払ってます」 「おうおう、簗田。お前なかなかやるな。愛人はどこの女だ?」 「錦町のスナックでママやってる小田桐麗子って女です」 「おう、REIのママか! 知ってるぜ。評判の美人ママじゃねえか。お前との子供が居たとは知らんかった。やるなぁお前、さすが男前だなあ」 「いや、カシラみたく財力も無いので、生活きついですよ」 「まあ、カネさえあれば幾らでも女は寄ってくる。お前も今回の仕事で株上げればオヤジから目え掛けられて出世できるぞ。俺はお前を買っている。お前は頭切れるからな」  同時刻、留萌署の堂場の元に捜査協力者からの密告電話がかかってくる。  堂場は電話に出ると、緊迫した様子で紙にペンを走らす。  堂場は電話を終えると、捜査の指揮を執る警部補の杉山の元に行き、内容を伝える。  そのあと、堂場と杉山は、刑事課長の広川の所へ行き話し込む。  広川が榊を呼ぶ。 「榊君、ちょっといいかい?」  榊は、調書を書く手を止めて、煙草を消して広川の元へやってくる。
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