第四章 一九八〇年、留萌署刑事 榊栄一郎巡査 堂場剛弘巡査

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「課長、なんでしょう?」 「今、堂場君の元に捜査協力者のソ連の中古車貿易業の男から電話が来て近々、留光興業と拳銃の取引があるらしいんだが、君も杉山君の指揮する捜査チームに入ってくれないか?」 「やばそうなヤマですねえ。まあ、頭は堂場にゃ負けますが、ドンパチ合戦なら俺の射撃は正確ですからね。任せてください」榊が言う。 「まあ、多村さんは退職したが、杉山君に加えて君達二人が居てくれてウチの署としても大変頼もしいよ」広川が言う。  一九八四年四月、留萌署捜査員と函館税関札幌税関支署留萌出張所の職員は合同捜査にて、本日到着するロシア船籍の自動車運搬船を待ち構えていた。  先ほど、別働隊の尾行班の刑事から監視中の留光興業事務所から幹部組員の簗田健司ならびに組員が出発したとの無線が来ていた。    留萌港には、ペレンスコの会社の人間が既に来ていて、運ばれてきた中古車を品定めしていた。納入業者の日本人中古車ディーラーの男も、堂場の調べで、留光興業と繋がりが有ると判明している。    自動車運搬船が、留萌港に入港し接岸する。搬入出口が開き、続々とソ連に輸出される中古車が運び込まれる。  反対に、外車や木材や海産物等の日本に輸入される貨物も続々と卸される。
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