第四章 一九八〇年、留萌署刑事 榊栄一郎巡査 堂場剛弘巡査

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 同時刻、同じく留萌港。  四トントラックが港内に入ってくる。やや遅れて白いバンが続く。  白いバンの後部座席に座る簗田は周囲の景色に鋭く目を光らせる。 「リアガラスがスモークで、車両後部にアンテナが付いているセダンが何台か来ているな」  簗田が言う。 「兄貴、サツですか?」  運転席の若い組員が聞く。 「だろうな。ペレンスコの野郎、やっぱりサツと繋がっていたか」 「兄貴、となるとカニに紛れさせて運んでいるのもバレてますよね? 大丈夫なんですか?」 「ああ、ペレンスコが最近サツとも繋がっている事は掴んでいたからな。今回は別の隠し場所だ。  俺はそっちで動くから、お前らはいつも通り海産物をトラックに運び込め。税関とサツがペレンスコの情報を鵜呑みにして真っ先に調べに来るだろうが、安心しろ。何も出て来ない」  港湾事務所に陣取る杉山は無線を取る。 「なんだって? 別働隊? Sの情報が漏れてる? 榊、どういうことだ? 堂場に換われ」  杉山は一通り堂場の説明を聞く。 「なるほどな。榊、堂場。面白い提案じゃねえか。それなら奴らに油断させる様、本隊は真っ先に四トントラックに向かわせて騙された振りしようじゃないか。ただし、お前ら防弾チョッキしてるのか? その別働隊は留光の組員に動きを悟られないように、最初はお前ら二人だけに任せることになるぞ。気をつけろよ」  無線を終えた榊と堂場は、四トントラックと白いバンを確認する。 「来たな」榊が拳銃の弾を確認しながら言う。 「多分、幹部の簗田っていう奴がいつも仕切っているはずだ。読みがビンゴなら簗田はペレンスコの所の人間とは接触せずに中古車ディーラーの男に接触する」
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