第四章 一九八〇年、留萌署刑事 榊栄一郎巡査 堂場剛弘巡査

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 四トントラックは、港湾構内に入っていく。白いバンは一度止まり、一人だけ降りる。 「簗田だ」堂場が呟く。  そのころ、税関の職員と留萌署捜査員本隊は四トントラックに向かう。 「おい、巻田!!サツの野郎、ゾロゾロ来やがったぜ。こっちには何も無いのにな。騙されやがって。へへっ」若い組員が隣の若い組員に話す。  中古車ディーラーの男はそれを見て、部下らしき男二人に耳打ちするとその場を去る。  部下らしき男は、輸入された外車の方へ向かい税関職員もそちらへ向かう。    職員は、輸入された外車のトランクやボンネット、そして下を覗き込み車体底部も検査する。  内部も、丹念に検査する。ダッシュボードやシートを触診したり天板に不自然な所が無いか調べる。  四トントラックでは、杉山が捜査令状を見せて捜査員が積荷の検査をする。  大量の発泡スチロールの箱を一つ一つ調べていく。 「堂場、カーキャリアに向かっている男は、中古車ディーラーの男か?」榊が聞く。 「そうだな。どうやら積み込み開始のようだ」 「簗田も動いたな」  簗田がカーキャリアに向かい。助手席に乗り込む。    カーキャリアに、検査を終えた外車が積み込まれる。 「なあ、堂場。あの外車だって検査してるんだろ。積み込むということは何も無かったんじゃねえのか?」 「いや、すぐバレる所に隠すわけないさ。海産物の中に隠すときも、二重底にして判らないようにしたりしてる。  今回は俺の見立てでは、銃をバラしてシートのクッションの部分のスポンジの中に隠すとか、細かい部品は外車の車載工具箱に紛れさせるとかだと思う。もっと手の込んだ事やってくるなら、ガソリンタンクを一回外して、切断して拳銃をタンク内に隠してから再び溶接して元に戻すとかもやるだろう」 「奴らそこまでやるのか?」 「ああ、留光会の下っ端に巻田って言う奴がいてな。留萌の飲み屋でたまたま隣になってサラリーマンの振りして色々聞いたんだが、ちょいと酒奢って酔わせたら、色々な密輸の手口しゃべり出してさ」 「さすがだな、堂場。確かに、お前の見た目なら刑事というよりサラリーマンに見える」  榊が笑う。
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