第四章 一九八〇年、留萌署刑事 榊栄一郎巡査 堂場剛弘巡査

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 二時間後、留萌署の取調室。中古車ディーラーの男は、留光興業に依頼され拳銃を積んでいると知りながら同意したとすぐに自供する。しかし、簗田の取調べは難航した。    杉山の計らいで、現行犯逮捕に貢献した榊と堂場が簗田の取調べを行っていたが、簗田はシラを切ってまったく認めない。 「知らねえな。ロシア人が勝手にタンクに隠してたの忘れて船乗せたんだろ。俺は知らねえ」  堂場は、榊が激高して簗田に危害を加える事を危惧し自ら主導で取調べする。  榊は、後ろに控え聞いている。 「簗田さん。このように物証は出てますし、このままシラを切って長引かせてもお勤めが長くなるだけですよ。今認めれば、素直に自供したという事にも出来ます」 「だからしらねえって!!」簗田は机を蹴る。  それを見た、榊はついに我慢の限界を超える。 「簗田てめえコラ!!」  榊は堂場の背後から、飛び出し簗田の髪の毛を鷲掴みにして椅子から引きずり倒す。  そして榊は簗田に馬乗りになり髪を掴んだまま床に簗田の頭を押し付ける。  簗田は、へらへら笑いながら榊に向かって唾を吐きかける。 「ほかの刑事なら話してもいいぜ。この暴力クソ刑事がこの部屋から消えない限り俺は言わねえよ」  簗田が言う。 「なんだとこの野郎。殺すぞコラ」  榊は、とっさに別の机にあった、ベンツのタンク内から見つかった証拠品の拳銃に手を掛ける。 「認めろよザコが!!この銃はてめえが隠させたんだろ!!コラッ」 「榊やめろ!!」堂場が制止する。 「堂場、お前の取調べは優し過ぎんだよ。俺がこのゴミ野郎の口から吐かせてやる」 「オラッッ!!吐けやコラ」  榊は簗田の口の中に強引に銃を突っ込む。  簗田はニヤニヤ笑って蔑む様な目で榊を見る。
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