第二章六代目織田組二代目新光会若頭補佐鷹組組長羽場鷹春

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 消灯時間を過ぎ、やがて深夜になり一度看護師が巡回に来る。入る瞬間に「ご苦労様です」と男の太いささやき声が聴こえた。監視の刑事はやはり居るらしい。看護師は羽場の様子を伺う。  羽場は寝たふりでやり過ごし、出て行った看護師の遠ざかる足音を聞いてゆっくりとベットから降りる。鎮痛剤が効いている。痛みが少し和らいでいる。  羽場は、静かに入院着を脱ぎ、昨日搬送された際に看護師が手洗いで一応洗ってくれたらしい救助時に着ていたスーツのズボンとシャツに着替える。アイロンはされていないのでくしゃくしゃだ。  今になって、昨日スーツのジャケットを海の中で捨てたのは失敗だったと後悔する。  財布と鎮痛剤をしまう。  その後、右足のみで立ち、静かにベットを入り口を塞ぐ様に静かにずらす。そして、シーツと掛け布団カバー二枚と入院着のズボン、シャツ二着づつをすべて結んでロープを作る。  それを窓のパイプ柵にしっかりと結びつけ、静かに窓を開けロープをおろす。羽場は右足だけで窓枠に乗るとロープを右太ももに二回巻きつける。  右鎖骨の骨折で右腕は使えない。左腕でロープを抱きかかえるように羽場は窓枠からゆっくりと滑り降りる。右足の太ももにロープが食い込み摩擦で熱くなるが、左腕と左手でスピードをコントロールし降りる。  肋骨から鋭い痛みがする。何とか耐えて滑り降り着地する。  急ごしらえで作ったロープにしては、偶然にもちょうどの高さで一階の出入り口屋根の出っ張りに届いた。  下を除くと、芝生になっている側があったのでそこから降りる。  左手のみで屋根部分にぶら下がり地面からまだ高さがあるが飛ぶ。右足のみで着地すると同時に、尻、背中と倒れ込み左手で受身をし衝撃を和らげる。
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