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真田の頭が一気に冴える。
「えっ? いつどこで見たとおっしゃってます? 父兄の方とかですか? 学校に出入りする業者とかですか?」
言いにくそうに柳井が言う。
「いやぁ壮志はまだ一年生なんで、絶対壮志の見間違いだと思うんですが……壮志の言う事が突飛過ぎて絶対にそんな訳無いと思うんです……」
「大丈夫ですよ。壮志君は、第一現場で宝箱のおじさんをはっきり見ているんですから。言ってください」
「絶対、そんな訳無いですよ。だって、宝箱のおじさんは、学校に交通安全教室で来たおまわりさんの一番偉い人だって言うんですよ。
びっくりして、壮志が学校から貰ってきたプリント見たら、札豊署の署長さんですよ。
実は僕、以前交通事故で親友を失ってから豊平区の地域交通ボランティアに参加していまして、署長の榊さんと何度も会っていますが、署長なのにあんなに穏やかで腰の低い人間の鑑の様な人がそんな訳……」
ガタンッ!!
真田はショックのあまり携帯電話を落とす。同時に、真田も床に力なく倒れこむ
「真田さん? 真田さん? 大丈夫ですか?」
落ちた携帯電話から柳井の声が漏れる。
「真田さん? どうしました?」
捜査本部に居た野村が駆け寄り、落ちた携帯を拾い真田に渡す。
「やっ柳井さん。すっすいません一度切りますね」
真田の目には既に大粒の涙がかろうじて表面張力を保ち溜まっている。
「のっ野村さん、さっ榊さんが……」
「榊さん? 榊署長ですか? とりあえず、一旦落ち着きましょう!」
野村が真田の背中をさする。真田は号泣しだす。
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