第三章真田睦月巡査 真相への入り口編

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 他の捜査員もこの騒ぎに集まってくる。 「皆さん、大丈夫! 大丈夫ですから」野村がなだめるように捜査員達に言う。  堂場や水澤ら捜査本部の上部の者は、木村の取調べで席を外しているが、こんな所見られてはいけないと真田は泣きながら思うが、涙が止まらない。  真田は捜査本部を飛び出す。  そのまま廊下や階段を駆け札北署を出て捜査車両に飛び乗る。  真田は、エンジンをかけると札豊署に向かう。  その頃、取調室では、捜査班長の水澤と捜査副班長の谷による、木村の取り調べが続く。  しかし、何を聞かれても木村は「私は知らない。誰かにハメられた」の一点張りである。  そして、アンダーパスで確保された際に木村自身が言っていた、待ち合わせしていたという人物は誰か? という質問には完全黙秘を貫く。  取調室の裏に控える堂場から、強引な指示が来る。  堂場の圧力に焦りながらも、水澤は冷静に考えていた。  この事件は、木村一人の犯行じゃない。もう一人の共犯……いや本当にこいつは犯人としてでっちあげられて嵌められただけかも知れない。  真田はその頃、創成川アンダーパスを南下する。  こうなったら、榊本人に直接聞こう。  木村を犯人に仕立て上げたのはあなたなのか? それとも、共犯なのか。  それとも可能性は少ないけど、木村と榊は、たまたまあの日、たまたま同時に第一現場にいて釣りをしていて、たまたま近くに居た壮志君に宝箱あるといいねえと言って、たまたま、真犯人が榊の近くに右手の入ったクーラーボックスを置いた。  本心を言うと、木村でもなく榊でもなく他の真犯人が居てほしい。  有るはずの無い、わずかな希望を考えながら真田は札豊署へ向かう。
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