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岬の突端に建つ屋敷に明かりが灯った。
年老いた主が身罷って久しく、年に数度、庭の手入れをする業者が出入りをする以外は、凪いだ瀬戸内海のように静かだった屋敷だ。
海沿いの住宅街からは少し外れ、道路を渡って石畳が続く。20メートルくらいだろうか。
長くはない。だが、岬の先まである敷地は三方を海に囲まれ、隔絶されている。
海沿いに付きものの防風林はなく、海に挑むかのように潮風に晒されながら建っている。
明かりが点くとその家はまるで、暗い海に浮かんでいるように見えた。
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