私は能力者

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 OKを貰えた時には夢見心地になった。  初デートは信じられないくらい楽しかった。大成功も大成功。  彼女の私服姿は着飾り過ぎず、清楚で可愛らしい。化粧もナチュラル。好感度はさらに上がった。二人きりでも沈黙は一切なかった。  彼女は明るくて朗らかだった。会話は弾み、私の話に彼女は熱心に耳を傾けてくれた。  こんなに自分と波長が合う人間が今までいただろうか? と感激した。  能力など使う必要がなかった。  私と彼女は阿吽の呼吸で同じものに気づいて、笑い、手を触れ合わせ、そっと握りあった。  一年の真剣交際を経て、結婚したのはつい先月のことだ。  私は人生の勝ち組としての能力を備え、しかも能力に関係なくこの世で一番自分に合う美しい妻を見つけるという幸運も持っている男なのだ。  能力と幸運。この二つを持っている私に怖いものなどなにもなかった。  そんな私に、あるアクシデントが起こった。  仕事から帰ると妻の様子がおかしい。元気がないし、塞ぎ込んでいる。体調が悪いわけではなく、何か良くないことが起こってショックを受けている様子だった。  何度も妻へ尋ねたが、妻は「言えない」と涙するばかり。 「僕はなにを聞いても君を嫌いになったりしないから教えてくれ」  妻の目を見て、心からの言葉で訴える。妻はそれでやっと口を開いてくれた。  今日の昼間、「近くに寄ったから」と、社長が我が家を訪ねてきたのだと言う。妻は勿論リビングへ案内してお茶を出した。  そして建てたばかりの新築の家を褒めていた社長が、突然妻に襲いかかった。しかも抵抗した妻へ私がクビになってもいいのか? と脅し、よりによって夫婦の寝室で妻を抱いたのだという。  私は怒りで目の前が真っ赤になった。  そして決めたのだ。社長には死んでもらうと。
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