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「ひつじさん……」
少女の瞳は小さな家電量販店のショーウインドーに向けられている。その中でも目を引くのは、可愛いイラストがプリントされた電気毛布だ。
……かわいい。かわいすぎる。ふわふわのひつじさん。
あの電気毛布が私の部屋にあったらどうにかなっちゃいそう。
ひつじさん。ひつじさん。きっと私をぽかぽかにあっためてくれて、眠れない夜はめえめえと子守歌を歌ってくれるんだ。そしたら私は楽しくなっちゃって、シンデレラの代わりにダンスを踊っちゃうんだ。白くて雪みたいなもこもこのひつじさんといっぱい踊って汗かいちゃって、パジャマもぽいっと脱いじゃうんだ。そして――
「ねえ君、何見てるの?」
「え、あ、あの、ひつじさんを見てて……」
「え? ああ、あれヤギだよ」
「やぎ、さん……?」
……かわいい。かわいすぎる。
あの電気毛布が私の部屋にあったら――
妄想少女の夢は終わらない。
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