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「待ってもアイツは来ねーぞ?」
小雪のちらつく中、通っている高校の校門を出た所で待つ少女に声を掛ける。
時刻は午後三時過ぎ――土曜日の今日、ほとんどの生徒は下校してしまった。
「……なんであんたが来るのよ?」
大きな瞳の愛らしい顔立ちをした少女は、指をかじかませ白い息を吐きながら、少年に気付き、ブラウンのショートボブを揺らす。
「お前、男を見る目ねーのな。……アイツ、逃げたぞ? 俺に断っておいてくれ、だとさ」
少年と少女は家が隣同士の幼馴染み。
通う学校も同じだ。
「……そう」
少女は俯く。
今日、少女はある男子生徒に告白するために校門で待っていたのだ。
だが先に察知されてしまい――
「こんな最低な事する奴、もう忘れろよ」
俯く少女は答えない。
フワリ――少年は自分のマフラーを少女に巻いてやる。
「……帰るぞ」
やさしい――マフラーはひだまりの匂いがした。
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