第1章

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―*― 「タダイマ。お母さん」 「お帰りー。チョット待っててー」 自宅に輿田さんに送ってもらい、私は玄関で靴を脱ぎながら母さんが地下室へ通じる階段を登る足音を聴いた。 「また何か作ってたの?」 「まぁね。凝り性の自分が怖いわ…」 もうすぐ40歳なのに、ウチの母さんは若い。 スタイルがそもそも良くて、何度か読者モデルになった事だってある。 まさに自慢の母…と、言いたいが…。 「あーッと…お母さん、地下室に居たんでしょ?」 「えっ?…げ」 私の家は、お母さんとお父さんが「趣味」で作った地下室がある。 そこへは専用の外履きの靴で行かなきゃいけないんだけど、お母さんはいつも地下室から出てくる時に、その靴を履いたまま来てしまう。 「また廊下を汚しちゃって…」 「あ、あはははは…ちゃんと掃除します」 絵に描いた様なドジッ子なのです。ウチのお母さんは(汗) いや、良い大人がと思うでしょうけど、ビックリするくらいに天然なんです。 「それよりお母さん。父さんは?」 「仁さんなら、また何か造ってるわよ?あ、その前に頼まれてたコーヒーを淹れないと…」 「その前に、靴を履き替えてよ?」 .
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