No.4 [2015/12/08]

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----- 2015/12/01 -------------------- 「ぼっちゃん、そのカサとこのバナナを交換してはくれまいか」 「いやだよ、雨ふってるもん」 「まあまあ聞いて下さい。このバナナはヨーロッパのキゾクが好んで食べる高きゅう品ですよ、どうでしょう?」 「キゾクさんのことよく知らないです、傘はあげない」 「そうかい、時間取らせちまってすまんです」 みすぼらしい男はしょんぼり空を見上げつぶやいた。 「バナナあげるから晴れてくれんかねぇ」 ----- 2015/12/02 -------------------- 飢えていた。 一週間も山の中を彷徨い、見つかった廃屋。 民家のようだが、捨てられてかなり経っているようだ。 朦朧とする意識とともに食料を探しまわった。 食料は見つけられなかったが、小さな食堂だったであろう部屋で、奇妙なものを見つけた。 朽ちて潰れかけた木製のテーブルとイス。 そのイスに突き刺さる形で、「かかし」が立てられているのだ。 十字型の木材の上に、白い何かの塊が乗せられ、それに赤い色で特徴の無い顔が描かれている。 白い何かの塊。 空腹が極まっているためか、私はそれがおいしそうに見えてきた。 触れるとやや湿り気があって弾力がある。 口の中が唾液でいっぱいになる。 私は決断し、食べてみることにした。 がじゅり・・・ 汁気がある、スイカとメロンの間ぐらいの歯ごたえ。 口の中に蜂蜜のようなとろけるように甘い、恍惚にも似た味が広がった。 腕に、足に、頭に、エネルギーが供給されるような感覚を覚えた。 もっと食べたい。 かかしの頭を見ると、さきほどかじったところが元通りになっている。 そんなことはいい。 もっと食べたい。 がじゅり・・・ うまい。 かかしの頭をみると・・・
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