第13章  医者も、薬も

6/22
前へ
/37ページ
次へ
微笑みを浮かべている顔は、 目の下に薄っすらと隈が浮かび、頬も微かにコケている。 そして、いつも身綺麗にしている彼が、 セーターで隠してはいるものの、 その下のシャツは、どことなくくたびれている。 そんな彼を前に、私は映画どころではなくなった。 「ねぇ、衛。疲れてるんじゃない?」 「そんな事ないよ」 笑顔を作ってかぶりを振るも、当然、私は鵜呑みにはできない。 「だったら今日は映画じゃなくて、お家デートにしない?」 しかしその提案に、彼は特に反対はしなかった。 「うん、いいよ。香奈が、それがいいなら」 ところが、 「じゃあ、衛の所に行ってもいい? 夕飯の買い物、途中でして」 そう言った途端、にわかに彼が焦りだした。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加