第13章  医者も、薬も

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だが、そうはしたものの、さすがに彼のマンションに着いた私は 驚きのあまり、しばし声をなくした。 「衛……、これ……?」 そして、ようやく呟いた私の目の前には、無残な有様が広がっている。 それは、つい数週間前からは想像もできないような光景。 キッチンには数個のカップ麺の容器が転がり、 リビングのソファの上には、スーツもワイシャツも靴下も雑多に置かれ、 どれがきれいで、どれが汚れ物なのかも分からない。 そして、ダイニングテーブルの上には、 飲みかけのバーボンの瓶と使用済みのグラス。 いったい、この現状がどうして生じたのか、にわかには頭が回らなかった。
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