第12章  小雨模様のパリ(続き)

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しかし、 「ここ、前の奥さんと暮らしてた場所でしょ?」 低く言った私の言葉に、彼の顔がハッと凍りつく。 そして「ごめん」と小さく謝って、視線を落とした。 「俺、自分の気持ちだけでいっぱいで鈍感すぎた……」 そして再び謝る彼の頬を、私は、やっぱりそっと撫でる。 「衛。気付いてくれて、ありがとう。そして、少しだけ時間をちょうだい。 その間に衛も、やっぱり私と一緒に住みたいのか落ち着いて考えて欲しい。 そして一緒に住むなら、衛は私と どんな風に暮らしたいのか考えて欲しいの」 うん――。 頷いた彼から、フワッと抱きしめられた。 そして、体を預けた彼の囁くような低い声が耳元で呟いた。 愛してるよ、香奈。
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