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「密偵……、つまりはスパイのようなものか」
「まあ、そんなところだな。俺たち第6支部、通称”蝙蝠(フレーダーマオス)”が行うのは情報収集や組織に潜入して密偵やスパイ活動、まあ情報を盗むのが仕事さ。今の立場も偽装したものだし」
偽装した、と彼は言った。確か角崎がこの部署に配属されたのは6年程前と聞く。つまりその頃からスパイとして活動していたと考えられる。もしかしたらもっと前からかもしれないが。
「なるほど、つまり巧妙に俺たちを騙し刑事として働いてたって事か」
「そういうこと、まあ複数人は仲間もいるから情報交換も出来るし何かあっても、”辞めた”ことにすればどうとでもなる」
そう言って笑う角崎に俺は小さく舌打ちする。まさか、信頼していた警部が本当は裏組織の人間で違う本性を持っていたとは。すると彼が俺を見て、
「あ、そういやあの事件よ。あれって誰が首謀者か分かるか?」
「誰って、それは坂井や飯田を殺した犯人って事か?」
「違う違う。この事件をけしかけたやつ、”暗殺者を雇って全員を殺させ、さらにその暗殺者でお前らを襲撃させた”黒幕ってやつ」
「……まさかそれもお前か」
まあな、と俺の問いに答えると角崎は携帯電話を取り出しどこかへ掛け始める。
「厳密には、俺の部下だな。俺もこれで小隊長みたいな立ち位置でな、数人の部下がいて今回は彼らにいろいろ動いてもらったってこと。……あぁ、俺だ。今すぐ警視庁に来れるか?うん、そうそう、”獲物”が掛かったからな」
そう告げると電話を切る角崎。その目つきは先程までとは打って変わって鋭いものだ。俺もその様子に警戒して少し後ずさる。するとそれに気づいたか、
「安心しろって。抵抗しなけりゃ今まで通り刑事としてやらせてやるって。あ、でもお前さん勘良いし、なかなか強いからうちに入るってのはどうよ?」
「うち?お前らの仲間になれってか」
「勿論。もし入ればこの事はチャラだし、お前の知り合いにも手は出さないよう、俺から言っておこう」
「……ふん、愚問だな。お前らみたいな人殺しを当然のように許容する連中なんぞ、こっちから願い下げだ」
俺はそう言って要求を突っぱねる。すると角崎はそうかーと言って、
「そう言うと思ってた。だが俺たちの存在を少しでも知ったお前さんには残念だが、……ここで死体になってもらうぜ」
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