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その瞬間、角崎の気配が一気に変わる。そう、こちらに向けてきたのは強烈な殺気だ。
今までもこういうのに遭遇し慣れているはずの俺でも、たじろがせるほどだ。これは強いというより、”こういう事は朝飯前”とでもいうのだろうか。
「さぁて、あんまこういうのは得意じゃないんだが目の前に敵がいるんじゃ、そうも言ってられないよな……!」
「ちっ、ここで殺されてたまるか……!」
そう言って俺は出口の方へ向かう。しかし直前で俺の目の前のドアに無数の穴が開く。それは銃、恐らく連射系の武器の類だろうか。
角崎の方を見ると彼の手にはまさしく銃が握られている。サブマシンガンだ、危うくこちらが蜂の巣になっていた。
「やっぱりいいなぁ、反応が早い。うちに来ればそれが活かせるかもしれんのに」
「黙ってろ、お前らに与する気は微塵も無い」
「なかなか強情だな。だがそう言ってられるのも今の内だけだ」
そう言って角崎が俺の方へ銃口を向ける。と、その時だ。何かが転がった音の後いきなり煙が上がり、視界が遮られる。
「何っ!?煙幕だと!?」
「こ、これはいったい……」「……口を鼻を塞ぎ姿勢を低くしろ、そしてそのままドアの方へ来い」
誰かが俺を呼んでいる。言われた通りハンカチで口と鼻を塞ぎ、しゃがみながらドアへ向かうとそこには意外な顔があった。
「お前、唯滋か!どうしてここに」
「話は後だ、今はここから出るぞ。それと仲間も来ているらしいから素早くな」
そう告げると、俺の同僚で公安部の刑事である木村唯滋は俺の先を、暗闇の廊下を駆けていく。俺も急いでそれに続く。
「あいつらを逃がすな!銃の発砲も許可する!」
角崎の怒号の後、何発か銃声が響く。どこから飛んでくるか分からないそれに、俺は恐怖を抱く。
「気にするな!恐らく適当に撃ってこちらを探っているんだろう、ただ走れ!」
「わ、分かった!」
唯滋にそう返事すると、俺たちは暗闇の中をただ走る。目の前に何がいるとも分からず、ただがむしゃらに。
そうしていると入り口が見えた。俺たちはそこを抜けてもまだ走る。銃声は聞こえてくるが、先程より間隔が空き始めている。
「とりあえず、近くの公園まで向かうぞ」
彼の言葉に俺は頷くと、それについていった。
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