6ノ後、物言わぬ眼に写るもの

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「さて、ここまで来れば何とか大丈夫だろう。だが夜道には気を付けるんだな、連中が襲ってくるかもしれんから」 そう言うと唯滋はふぅと息を吐く。俺の方も息の乱れを何とか整えると、自らの疑問を訊ねる。 「唯滋、助けてもらったのはありがたいがなぜあの場にいたんだ?もしかしてお前も角崎の事を知っているのか?そして今回の事件と、旅団の関係は?」 「ずいぶん矢継ぎ早に質問が来るもんだ。女の子ならありがたいが男はねぇ……。ま、久なら馴染みという事で答えてあげよう、その代わり答えられる範疇でだが」 そう答えると、彼は近くの花壇のへりに座る。俺も隣に座ると彼は口を開く。 「まず最初の質問だが、これは上層部の指示だな。実はこの前の狙撃事件からお前を監視しろって上から命令されてな。という事で尾行させてもらっていた、あそこで会ったのも偶然じゃなかったり」 「俺が監視?何もしていないはずだ、俺は」 「んー、というかお前の周りで色々と起きてるからそれにお前が関わっているんじゃないかと疑ってるんじゃないか?まあ、今回については明らかに自分から首を突っ込んでいるようだがな」 「それについては反論の余地がない……」 俺がそう言うと、まあ仕方ねえさと唯滋は言い、 「あれだけ奇妙な事が立て続けに、しかもお前の周りで起きたのなら疑うだろうよ。だがそれを解決している事を上は一応評価しているようだがな」 「そうか。……しかしあの場にいてくれたのは助かった。危うく殺されるところだったからな」 「そうだろうな。で、2つ目の質問だがお前の尾行にこれは関わってくる」 俺の尾行に?と返すと唯滋は頷く。 「まあこれはある情報筋からだが、どうも角崎が本当は警部ではないのではという情報が入ってな。それで並行して調べていたんだが、そしたら数日前のお前らが捜査している殺人事件に行きあたってな。どうも事件現場の近所でやたらと”事件について口外するな”と人々に念を押す連中がいたらしい」 「事件に口出しをするな?だが現場付近では犯人の情報を……」 「しかもだ、しかも彼らはその代わりに”着物を着た、傷の付いた女を見た”という事にしろと言っていたらしい」 着物に傷の女、それは俺が八束たちから聞いた話だ。つまり俺たちが聞いた話は、全て作り話であったということだ。
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