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それじゃあ、と俺は言って唯滋に、
「あの女は連中に雇われ依頼をこなしただけ、という事か……」
「だろうな。……だがそうなるとますます分からんな。なぜわざわざ殺し屋なんぞを雇って殺す必要があった?連中は俺らよりも”そういう事”には慣れているはずだし、いちいちこんな事で外部の人間を雇うのは煩わしいと思うのだがな」
そう言って彼は顎に手をやる。俺もしばらく考えるが、答えは浮かんでこない。その代わり、俺は角崎が言っていたことを思い出す。
「そういや、連中の部隊は全て残っているらしいが」
「ああ、そうらしい。まだ詳しくは調べていないがそれぞれある分野に特化していて、角崎のような密偵専門だったり交渉、後方支援などの戦闘が不得手な部隊もいるらしいな」
そうなのか、と俺は納得するがふとある事に気付く。
(しかし唯滋もよくそれだけ情報を仕入れてこれるな。俺でもほんの僅かしか手に入れられなかったのに。独自に情報を手に入れるルートを持っているのか、しかし公安にしてはあまりに自由に動き回ってるよな……)
彼の部署は公安部、という事以外分かっていない。もしかしたらかなり特殊な立ち位置にいるからこそ、それだけ情報を仕入れられる、そういうことかもしれない。ふと唯滋がそういやと言うと、
「最近、お前の近くをうろついてる奴がいるんだが。何というか、素人なんだが妙に隠れるのは上手くて。多分高校生ぐらいの女の子なんだが」
「高校生の女の子?……まさかその子、こんな感じじゃないか?」
そう言って俺は写真を見せる。それは前に別に言ってもいないのにメールで送られてきた、知り合いの女子高生の加納由紀の写真だ。唯滋はそれを見ると、
「あーその子だわ。何だ、お前知り合いだったか」
「やっぱりそうだったか。……しかしいったい何を?」
「分からんな。だがお前、この子と知り合いで仲良いみたいだな。それなら気を付けた方がいい」
「何がだ?」
「もしかしたら連中、お前の関係者に危害が加わる可能性がある。しかもお前と仲がいいのなら、”機密情報を何か聞いている”かもしれないから口封じする、なんてことがあるかもしれん」
その瞬間、俺は唯滋の制止を振り切り走り出す。そうだ、連中なら俺の知り合いを人質にしたり、まして殺すことなど造作もないのだ。
俺の脳裏には、刺された寛の姿が浮かんでいた。
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