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次の日の朝。
勢いよく飛び出したはいいが由紀がどこにいるか見当がつかない。まあ無理もない、彼女はどこからともなく現れ乱入してくるのだから。
「そういやあいつの事は全然知らないもんな。だが今はそうも言ってられない……」
そう呟き、走り出そうしてふと足を止める。俺が見る方向、そこには辺りをキョロキョロと見まわす1人の少女が。その少女はまるで何かを気にしているかのように周りを見ており、その顔には不安の表情が浮かんでいて手には何か握られている。
俺は彼女に近づいていく。そしてその後ろに立ち、肩を叩くと少女はビクッと体を震わせ恐る恐る後ろを振り返る。それに対し俺は、
「安心しろ、槙田だ。由紀、何かあったのか?」
すると由紀はしばらく黙っていたが、やがてわなわなと震え始めると涙を流し始める。俺はいきなりの事で動揺するが、
「だ、大丈夫か?いったい何が……」
「ご、ごめん、なさい……、で、でも私じゃ、もう、どうすることも、できないの……!」
「……ごめん、もう落ち着いたから、うん」
一旦由紀を公園のベンチに座らせ、落ち着かせてからハンカチを渡して涙と鼻水を拭かせる。由紀もようやく落ち着いたようでいつもの笑みを浮かべている。だがそれは、いつもより少し暗く見えたのは俺だけだろうか。
「で、何があったんだ?それに俺を尾行していたみたいだが、何か関係あるのか?」
俺が聞くと、彼女は答えるのをためらう。どうも言いたくないというより言いずらいという感じだ。何か俺には話しにくい事なんだろうか。
さらに彼女は先程からデジタルカメラを持ったまま、離そうとしない。まるで誰にも盗られないように、しっかりと。あの時の様子から察するに何かを見てしまって、それを撮ってしまったか。
このまま黙っているだけでは埒が明かない。そこで俺は由紀にあの事を伝える。
「由紀、落ち着いて聞いてほしい。実は、……寛が刺された、俺を庇って」
「え……!?そ、それって、大丈夫なの……!?」
「ああ、幸い命には別条なかったから今は病院で入院している」
そう、と由紀はため息を吐くと、
「……やっぱり、私があんなことをしたから」
「あんな事?やはり、何かあったのか?それに、先程から握っているそのデジカメも気になるのだが」
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