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「うーん……でも」
「? どうした?」
その時、突然絵描きの筆が止まった。あごに手を当て、何やら考えている。
その様子に首を傾げて、魔王は返答を待った。
「なんか華が足りないんですよね……」
「華?」
「あ、魔王さんはもちろん華やかでお美しいですよ! でも、こう、もっと柔らかい何かを……そうだ!」
ひとりぶつぶつと呟いていた絵描きと、一瞬目が合う。その途端、なぜかぱあっと明るい笑顔を向けられた。
「君! ちょっと魔王さんの隣に立って!」
「え」
もしや、これは一緒に描かれるフラグではないだろうか。いや、御免こうむりたい。なぜ異世界の魔王と一緒に描かれるという、命の危険に及びそうなことをしなくてはいけないのか。
この世界でも平穏無事に過ごしたいという私の願望をかなり無視した提案だ。
魔王はそれを聞くと目を爛々と輝かせ、身を乗り出した。
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