2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ありがと…」
そう言うと、富丘くんはまた微笑んだ。
「それで」
「え?」
僅かに身じろいだ彼に、一歩だけ距離を縮めた。
私を呼び止めた理由。
まさか、テストの順位だけを話したかったわけではないだろうに。
「まだ、何かあるんじゃ」
「まさかっ!それだけだよ。今回は負けたけど、次はこうはいかないってね」
遮るように、富丘くんが笑う。
見る人が見れば、綺麗な笑顔。
でも、私から見れば……。
「そう…じゃあ」
「あ、うん。ごめんね、こんな事でわざわざ呼び止めちゃって」
大丈夫だよ、と一言言って踵を返した。
嘘ばっかり。
心の中で悪態つく。
嘘は嫌い。理由なんてない。
当たり前でしょ。
理由なんて、いらない。
嘘は嫌い。
それだけで十分。でしょ?
人が嘘をついているかどうかなんて、すぐにわかる。
なのに人はまた嘘をつく。
真実よりも、嘘の数のほうが、言葉の中には多く含まれている。
最低……。
最初のコメントを投稿しよう!