嘘だらけの世界から

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「ありがと…」 そう言うと、富丘くんはまた微笑んだ。 「それで」 「え?」 僅かに身じろいだ彼に、一歩だけ距離を縮めた。 私を呼び止めた理由。 まさか、テストの順位だけを話したかったわけではないだろうに。 「まだ、何かあるんじゃ」 「まさかっ!それだけだよ。今回は負けたけど、次はこうはいかないってね」 遮るように、富丘くんが笑う。 見る人が見れば、綺麗な笑顔。 でも、私から見れば……。 「そう…じゃあ」 「あ、うん。ごめんね、こんな事でわざわざ呼び止めちゃって」 大丈夫だよ、と一言言って踵を返した。 嘘ばっかり。 心の中で悪態つく。 嘘は嫌い。理由なんてない。 当たり前でしょ。 理由なんて、いらない。 嘘は嫌い。 それだけで十分。でしょ? 人が嘘をついているかどうかなんて、すぐにわかる。 なのに人はまた嘘をつく。 真実よりも、嘘の数のほうが、言葉の中には多く含まれている。 最低……。
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