2100人が本棚に入れています
本棚に追加
/178ページ
真矢がウチに来て、オレは真矢の事を何も知らないってことに気がついた。
これまではただ真矢との甘い関係にのぼせて、細かい事は気にせず甘えてばかりだった。
けど、ウチに来た真矢は、通話でオレをメロメロにした真矢……だけじゃなくって、学校で見る『秀才ヤロー桐田真矢』でもあった。
同一人物だから当たり前だ。
だけど、オレはそのことをイマイチよくわかってなかった。
礼儀正しく、真面目でキッチリしている。
それはもう、オレの想像を絶するほどに。
真矢は年のわりにはちゃんとしてる……って程度なのかもしれない。
けど、オレが礼儀とかそこら辺、特にいい加減だから、ちょっとキッチリしたとこ見せつけられるだけですごくビックリしてしまう。
そうやって考えてるうちに『桐田真矢』に関して、オレはあまりに知らなさ過ぎるって事に気付いてしまったんだ。
ドコに住んでいて、ドコの中学出身で、友だちで一番親しいのが誰で、今まで恋人がいたのかとか……。
クラスでちょっと親しい奴なら知ってそうな事を何も知らなかった。
まあ、逆にちょっと親しい友だちレベルじゃ絶対知らないような事だけはイッパイ知っちゃってるけどな!!!
真矢と正式に恋人ってことになって、その恋人のことをあまりにも知らな過ぎることに、只今、絶賛落ち込み中だ。
いや、正しくは授業中だけど。
まあ、授業中くらいしか落ち込む時間がないんだ。
けど同一人物だってちゃんと認識すると、ちょっと気になる事が出てきてしまった。
オレ『秀才ヤロー桐田真矢』のこと……好きか?
どちらも真矢なんだし、分けて考える必要はない。
そんな事はわかってるけど……。
真矢に『オレの好きなとこ、三つ言えるか?』なんて質問をした。
オレは言えるか?『秀才ヤロー桐田真矢の好きなとこを三つ』。
ふっと情景が浮かんだ。
一年のときだったか。
『学校に感謝!』とかいって、学校の校舎以外の部分を清掃するイベントみたいなもんがあった。
オレやフー太たちはダラダラサボってふざけてるだけで、当たり前のように掃除なんてしてなかった。でも、掃除道具だけは片付けなくちゃいけなくって。
たった竹箒三本、集合場所にある回収場所に持ってくだけなのに『オマエが持ってけよ』なんて押しつけ合ってた。
今思うと、何をそんなにイヤがってたのか、さっぱりわからない。
最初のコメントを投稿しよう!